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頸椎椎間板ヘルニアの治療・手術ガイド » 【治療編】頸椎椎間板ヘルニアの気になるQ&A » 治療の流れや治療期間は?

治療の流れや治療期間は?

頸椎椎間板ヘルニアの治療の流れ、一般的な治療期間などについて、分かりやすく症状の段階ごとに解説します。

【治療の流れと治療期間】頸椎椎間板ヘルニア・初期段階

ヘルニアも初期段階の症状であれば、首や肩に違和感があるといった程度。とくに薬物や外科的な治療は必要としません。医師の指示にしたがって、基本的には安静にします。

安静を要する期間は、大体1~8週間程度。患者の半数以上は、この期間内に症状が改善します。

仕事など止むを得ず動かなければいけない理由があったり、痛みが激しくなった場合に備えて、痛み止めをもらっておきます。

安静にしているだけで症状が改善されない場合、次の段階の治療が必要となります。

【治療の流れと治療期間】頸椎椎間板ヘルニア・中期段階

首や腕などに、痛みやしびれが生じます。基本的には、痛み止めを服用しながら、症状が改善するのを待つという保存療法になります。薬を服用していても、基本は安静にしなければいけません。

投薬治療による期間も、1~8週間程。ただし、どの程度の改善で治療を止めるかについて、患者の意志によるところが大きいです。患者が「痛い」と感じれば、医師も薬を処方せざるを得ないため、治療期間は長引きます。

中には、数年間も服用を続ける方もおり、長期的な痛み止めの服用による副作用も懸念されるため、医師の指示に従って適切な時期に中止しましょう。

なお、薬の服用とあわせて通院によるリハビリを受ける人もいます。リハビリによる治療期間は、週3回通院したと仮定して約4週間はかかります。

【治療の流れと治療期間】頸椎椎間板ヘルニア・後期段階

歩行困難、排尿困難といった重症段階に入ると、手術による治療が一般的になります。

頚椎椎間板ヘルニアの手術方法のひとつが、レーザーによる治療方法です。これは「PLDD」とも呼ばれる手術方法で、レーザーの照射によって椎間板内の圧を減らし、ヘルニアによる神経への圧迫を改善する手術です。局所麻酔で行う体への負担の少ない手術で、手術時間も15分ほどで終わります。

次に、「摘出手術」も頚椎椎間板ヘルニアの手術方法として挙げられます。摘出手術は、飛び出した髄核の一部をメスで切り、神経根にかかっている負荷を軽減する手術です。摘出手術には目視で行う方法と、内視鏡や顕微鏡、X線などを用いて行う方法があります。摘出手術は、減圧法などでは顕著な改善が見られない症状に対して用いられることが多い手術方法です。

そして、もうひとつ「固定術」とも呼ばれる手術があります。この手術方法は、ヘルニアの原因となっている椎間板などを切開で切除し、人工骨を用いて痛みの原因となっている髄骨や関節の動きを固定するという手術方法です。人工的に動きを抑えることで痛みを少なくする手術方法で、固定術の代表的なものとして「前方除圧固定術」と「椎弓形成術」の2種類があります。

手術方法や術後の経過により、入院期間は大きく異なりますが、日帰りでできるレーザー治療をのぞいて、一般的には2週間程度の入院治療が必要となります。その間も、薬物療法や理学療法(リハビリ)などを行います。

退院しても、リハビリや薬物投与を継続的に行う必要があるため、治療期間はトータルで、数ヶ月におよぶと考えましょう。

頸椎椎間板ヘルニア術後の流れ (術後まもなく)

手術は1日程度安静にして、患部が落ち着くのを待ちます。しびれ感は1日~数日続くことがありますが、早ければ術後しばらくしてから安定してきます。

全身麻酔が消える頃にしびれなどが出現しても、強い痛みなどがなければ安眠できます。頸椎椎間板ヘルニアの場合、通常は術前の痛みが術後には消失しているのが一般的です。

手術の翌日から歩行訓練などのリハビリテーションが始まり、食事も摂りながら回復が始まります。

術後2日目で足や腕の点滴が外れ、寝る・座るといった基本的な動作を行います。まだ傷口は完全に塞がってはいないため下着を履くことは難しい状態ですが、歩行器などを使って歩く動作を始め、少しずつリハビリに入ります。

術後しばらくの間は痛み止めの注射などを打つ必要がありますが、術後3日目からはシャワーが可能となり、早ければ4日目程度で早期退院ができるようになります。リハビリは朝と夜などに分けて2回行い、早期回復を目指します。

個人差はありますが、術後1週間から2週間程度自宅で安静にした後は、体力の回復をみて仕事や日常生活に復帰することができます。

ヘルニアが発症する前には上肢や首などが痛むものですが、術後は患部が取り除かれるため、痛みがなく安定して仕事や家事などに打ち込むことができます。

ただし激しい運動などをするとしびれが出現したり、痛みが出る可能性があります。術後1週間目には病院を受診し、患部や上腕、首などの状態をチェックします。必要に応じてステロイドなどの点滴を打つなどして治療を継続し、様子をみます。

頸椎椎間板ヘルニア術後の流れ (術後から1ヶ月)

術後しばらくはしびれなどを生じることがありますが、上肢に向かって放散するタイプの痛みのみについては、保存療法や安静状態を続けることで回復することが多いため、激しい運動などは避けて安静にすることを心掛けます[1]。

1週間後に診察を行い、その後状態が安定しているようであれば、1ヶ月後に再診を受けて状態を確認します。この間に麻痺や筋肉の萎縮などが起きた場合、または両手や両足に症状が見られる場合には、できるだけ早くに手術を受ける必要があります。

しびれについては、術後しばらくは症状が続くことがありますが、3週間程度でピークとなり、その後は鈍いしびれなどが続いて自然回復することが多いため、数週間から数ヶ月間は様子をみることになります。

上肢に向かう放散痛のみであれば保存療法を続けることで回復が見込めます。具体的には、頚椎を牽引する方法や、頚部カラーによる固定、頚部のマッサージなどといった理学的療法を症状や状態にしたがって行います。

頚椎カラーについては長期間の装着によって筋肉が萎縮する可能性があるため、数日間着用して症状が和らぐ場合は1ヶ月から2ヶ月間の装着が推奨されます。

頸椎椎間板ヘルニア術後の流れ (術後から1年)

手術後1ヶ月から2ヶ月は保存療法を主体としながら、頚椎カラーなどの装着によって回復を試みます。自宅では安静にしながら激しい運動や無理な動作、姿勢を避けて生活します[2]。

術前から歩行障害が起きているケースについては、術後にリハビリテーションを行い、数週間から数ヶ月を必要とします。リハビリテーションで正しい歩行や動作を習慣づけ、回復に向けて訓練を行います。

術後数ヶ月から1年目までは定期的な来院によって患部の状態や動作のチェックを行い、神経症状が起きているかどうか、またその程度の診察と、頚椎のX線撮影によるチェックをこまめに行います。

通院は3ヶ月から1年の間必要とされますが、個人差があるため必ずしも1年間通院しなければならないわけではありません。

【参考URL】

参考[1]:『頚椎椎間板ヘルニア』 日本脊髄外科学会
http://www.neurospine.jp/original24.html

参考[2]:『顕微鏡下後方ヘルニア摘出術を行った後外側頸椎椎間板ヘルニアの2症例』佐々木学 安部倉信 中西克彦
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/23/2/23_243/_pdf

合併症の危険性は?

頚椎椎間板ヘルニアの手術によって起こる可能性のある合併症があります。

首の前側には食道や頸動脈などの重要な器官が集まっているため、首の前側から手術をする「前方除圧固定術」の場合、難易度が高いです。

前方除圧固定術の合併症には、感覚障害や完全麻痺などの症状が出てしまう「四股麻痺」があります。

四股麻痺は、手術中に何らかの原因で脊髄に力が加わってしまったり、脊髄を損傷してしまうことで起こり得る合併症です。

そのほか、髄液が漏れて出してしまう「髄液漏」という合併症が起こる可能性もあります。

また、手術によって起こり得る合併症のひとつとして、肺の血管が詰まってしまう「肺梗塞」も挙げられます。

頚椎椎間板ヘルニアの手術は、手術箇所が1箇所であっても全身麻酔を使用して行われ、手術時間は2時間ほどを要します。

手術箇所が2箇所の場合は倍の4時間ほどかかってしまうことがあり、その間患者は動くことができないため、血管に血液の塊ができてしまう場合があるのです。

これが肺梗塞の原因となります。

この症状は「エコノミークラス症候群」と似ており、重症だと死亡してしまうこともある大変危険な合併症です。

そのほか、手術部位の感染症なども頚椎椎間板ヘルニアの合併症として挙げられます。

再発しないための過ごし方

頚椎椎間板ヘルニアの再発を予防するには、まず姿勢を意識することが重要です。

人の頭部はとても重いので、姿勢が悪いと首に頭部の重心がかかってしまい、大きな負担となってしまいます。

姿勢をまっすぐにし、首に負荷がかからないようにすること、また首を強く後ろに反らせるなどの無理な動きを避けることも大切です。

次に、転倒などの衝撃を避けるように意識することも予防につながります。

日頃の行動に注意して、つまずいて転ばないように気をつけましょう。

そして、首の負荷を軽減するために、体の筋肉をしっかりつけることも、頚椎椎間板ヘルニアの予防方法のひとつです。

筋肉をつけるだけでなく、ストレッチなど習慣づけて体を柔軟に保ち、衝撃や重さから頚椎を守ることができる体作りを目指します。

こうした予防方法は、患者さんの年齢や生活習慣、体質などによってどの方法が適しているかが異なるため、それぞれに合った予防方法を取り入れることがもっとも重要だといえます。