頚椎椎間板ヘルニアの保存療法である理学療法では、ヘルニアが脱出しているなど重度な症状が見られない人、痛みやしびれなどの症状が現段階では小さい人、また初めて頚椎椎間板ヘルニアの治療をするという人に適しています。
強い痛みがでる急性期(2~3週間)の保存療法は、消炎・鎮痛剤などの薬物療法がまず行われます。痛みの急性期を過ぎたら、一般的には理学療法を行い経過を観察します。
頚椎椎間板ヘルニアの理学療法では、電気・温熱刺激、ストレッチ体操、牽引、カイロプラクティックなどがあります。
温熱療法は、冷えや緊張などにより筋肉が固まってしまい、頚椎椎間板ヘルニアの痛みや症状が強くなっている場合に用いられます。 温めることで筋肉の緊張を解し、血行をよくすることで症状の緩和を目指します。ただし、患部が炎症している場合は温めることで痛みが増すことがあるので注意が必要です。
電気を用いた治療では、マイクロカレント治療器またはEMS治療器を用いた治療方法があります。手や足の末端がしびれている患者に有効であり、頚椎の椎間孔から出ている神経(脳も含め)の電気的信号異常にアプローチします。
首回りの筋肉を強化して、痛みが出にくい身体づくりを行います。ストレッチも温熱療法と同じように、筋肉の緊張によって頚椎椎間板ヘルニアの症状が悪化している場合に用いられます。
ストレッチをすることで適度に筋肉を動かし、緊張をほぐすことで症状の緩和を目指します。 ただし、頚椎椎間板ヘルニアの症状を抑えるには安静にしていることが重要なので、自己流でのマッサージは絶対に行ってはいけません。 マッサージは理学療法士の指導のもとで行うことが前提です。
牽引療法は、椎間板が変形してしまっている人や、椎間板の圧迫によって痛みやしびれを感じている人に行われる治療です。
専用の機械を使って頭を釣り、首を伸ばす運動を繰り返します。頭の重さで頚椎にかかっていた負荷を軽減させたり、首周辺の筋肉をほぐす効果があります。頸椎の牽引は、頸椎の位置を正常な状態に戻し、圧迫や変形を改善させることを目的としています。
ただし頚椎椎間板ヘルニアの場合、牽引療法は効果が見られる場合と見られない場合があり、効果がない場合は症状を悪化させてしまう恐れもあるので、自己流の牽引療法は厳禁です。頚椎椎間板ヘルニアの治療として牽引は無効であると判断する医師も多く、発症から時間が経過している場合、ほとんどが効果はないともいわれています。牽引をうける際の注意点として、牽引中に少しでも痛みや違和感があれば中止をしてもらうこともあげられます。
カイロプラクティックはアメリカ発祥の理学療法です。痛みやしびれの症状を改善させ、人間の自然治癒力を高めることを目的としています。しかし現在、日本でのカイロプラクティックは法制化されていません。結果、カイロプラクティックという定義もあやふやです。整体やマッサージ等の器具を使用しない手技による医業類似行為を受けて危害が発生したという事例もあり、慎重な判断が求められます。
頚椎椎間板ヘルニアでは、症状の軽いうちは保存療法を行うことがほとんどです。しかし、保存療法を続けていても症状が改善せず、痛みが繰り返すようであれば根本的な解決にはなっていません。改善が見られないまま保存療法を続けていくことによって、むしろ悪化してしまうことも考えられます。
根本的な解決を考えるなら、やはり手術治療がおすすめです。信頼できる医師のもと、頚椎椎間板ヘルニアを根本から治療しましょう。